改正貨物自動車運送事業法の荷主関連部分の施行について
この7月1日より改正貨物自動車運送事業法のうち「荷主関連部分」について施行されるため、今回は当該テーマについて解説したいと思います。
1.貨物自動車運送事業法改正の背景
トラック運送事業ではドライバー不足が深刻化しており、我が国の国民生活や産業活動を支える物流機能が滞ることのないようにするためには、ドライバーの長時間労働の是正等の働き方改革を進め、コンプライアンスが確保できるようにする必要があります。
そのためには、荷主や配送先の都合による長時間の荷待ち時間や、ドライバーが労働時間のルールを遵守できないような運送の依頼等を発生させないことが重要であり、荷主の理解と協力が必要不可欠です。
よって、荷主の理解・協力を得て、トラックドライバーの働き方改革・法令遵守を進められるようにするための改正が行われました。
※荷主には、着荷主や元請事業者(利用運送事業者を含む)も含まれます
2.荷主関連部分の概要
(1)荷主の配慮義務(新設)
荷主は、トラック運送事業者が法令を遵守して事業を遂行できるよう、必要な配慮をしなければならないこととする責務規定が新設されました。
(2)荷主勧告制度の拡充
荷主勧告制度の対象に、貨物軽自動車運送事業者が追加されました。
荷主に対して勧告を行った場合には、その旨を公表することが法律に明記されました。
(3)荷主に対する国土交通大臣による働きかけ等(新設)
①働きかけ
国土交通大臣は、「違反原因行為(トラック運送事業者の法令違反の原因となるおそれのある行為)をしている疑いのある荷主に対して、関係省庁と連携して、トラック運送事業者のコンプライアンス確保には荷主の配慮が重要であることについて理解を求める「働きかけ」を行います。
②要請、勧告・公表
荷主が違反原因行為をしていることを疑うに足りる相当な理由がある場合等には、「要請」や「勧告・公表」を行います。
荷主に対して勧告を行った場合には、その旨を公表することが法律に明記されました。
③公正取引委員会へ通知
トラック運送事業者に対する荷主の行為が独占禁止法違反の疑いがある場合には、「公正取引委員会へ通知」します。
※違反原因行為(例)
①待ち時間の恒常的な発生
荷主の都合による長時間の荷待ち時間が恒常的に発生
→過労運転防止義務違反を招くおそれ
②非合理な到着時刻の設定
適切な運行では間に合わない到着時間の指定
→最高速度違反を招くおそれ
③重量違反等となるような依頼
積込み直前に貨物量を増やすよう指示
→過積載運行を招くおそれ
以上
今後は、貨物自動車運送事業法のうち「荷主関連部分」以外の改正点についても、順次取り上げて行きたいと思います。